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私は負けない

2009.05.08.Fri
 週末暑くなるそうです。

モニカ・セレシュ 「私は負けない」モニカ・セレシュ 「私は負けない」
(1997/07)
モニカ セレシュ

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 モニカ・セレス。恐らくはグラフの次を担うだろうと期待されていたテニスプレイヤーです。しかし、93年、フレンチオープンの前哨戦として望んだドイツのシチズンカップ。グラフのストーカーによって背中を刺されるという不幸な事件に見舞われました。この本はそんな彼女がそこから立ち直るまでを綴った感動の手記です。その中から、名文だけを抜粋してみました。


 人生がおとぎ話のようだったら――子供の頃、よくそんなふうに思ったものだ。むかしむかしあるところに・・・・・・いつまでも幸せに暮らしましたとさ・・・・・・お姫様、ドラゴン、雪のように真っ白な馬にまたがった騎士。おとぎ話の世界では、悪者はいつも退治され、呪文はただ一度のキスでたちどころに解かれる。しかし、現実の世界は勿論おとぎ話ではない。あらかじめハッピーエンドが予定されているわけではない。それが人生というものだ。

 頭の中では様々な考えが渦を巻いていた。耳の中では、“刺された”という言葉がこだましていた。それは今まで一度も口にしたことの無い、考えたことさえないことばだった。なのにわたしはナイフまでこの眼で見てしまったのだ。あのナイフがわたしの背中に突き刺さり、そして引き抜かれたのだ。わたしは刺されたのだ・・・。

 日が経つにつれ、わたしは次第に自分の殻に閉じこもるようになってしまった。わたしの人生はすでに、子供の頃に思い描いたそれとはまったく異なるものになってしまっていた。
子供の頃には、かぎりない可能性が広がっていたのに。怪物など夢の中だけの存在で、はるか彼方の地平線上では、未来が黄金の輝きを放っていたのに。可能性も未来もわたしにはもうどこにも見えなかった。

 ソファに寝そべっていないときには、キッチンで食べ物を探した。食べるものはなんでもよかった。アイ
スクリームの大きな四角いカートンを抱えては、中身が空になるまで口に運びつづけた。味などまったくわからなかった。

 相変わらず夜はあまり眠れず、食生活は依然として滅茶苦茶だったけれども。
まずは小さな目標からだ。あまりにも長い道のりに気がめいりそうになるたびに、自分にそう言い聞かせた。まずは小さな目標からだ、と。

 クリスマスの日、両親はわたしにもうひとつブレスレットを買いたいと言い、今度はちがうデザインのものを二つ選んで、どちらがいいかわたしに尋ねた。ひとつは鎖のあいだに亀の飾りのついた金のブレスレットで、もうひとつはてんとう虫の飾りのついたものだった。
「亀は長寿のシンボルね。」と母が言った。
「てんとう虫は幸運のシンボルだ。」と父がつけ加えた。「どっちが欲しい、モニカ?」
わたしは亀の方を選んだ。幸運は信じられなかったが、長生きができればどんなことでも乗り越えられる。そう思ったのだ。

 長いあいだこの瞬間を夢見てきました。といっても、それをきちんと心に思い描くことは出来ませんでしたが。でも、やはりこれだったんですね、わたしが夢見てきたのは。とにかくベストを尽くすだけです。



 セレシュは刺傷事件のときのナンバー1ランキングから95年、復帰する際、ナブラチロワのはからいで、ひとつもランキングを落とさずに済みました。それよりも偉大なことは、復帰後のカナディアンオープンでトップ選手をなぎ倒しいきなり優勝し、その直後のUSオープンで決勝まで進出し、グラフと死闘を演じたことです。年明けの全豪オープンでも優勝し、「まるでブランクなど無かったよう」に感じたらしいです。
 そして刺傷事件という不運に見舞われながらも、家族や周囲の人たちに支えられて、PTSDを乗り切ってみせた彼女の強さに驚嘆し、感動します。

 この本がすばらしすぎて思わず原著のほうも買ってしまいました。また時折紹介できればと思います。 
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